えんしゅーどらいぶ

2018.07.05

遠州病院病診連携糖尿病勉強会

台風から変化して温帯低気圧と活発な梅雨前線の影響で、各地で前代未聞の水害が報道されていますが、皆さまお元気に過ごされているでしょうか。梅雨の時期は湿気による蒸し暑さから体調を崩される方も多く、食欲もムラが出てしまいます。糖尿病の方に取っても血糖変動が大きくなる事もあるので要注意ですね。

さて、先日7月5日に当院3階講堂にて、遠州病院病診連携糖尿病勉強会を開催致しましたので、ご報告申し上げます。

今回のゲストは関東労災病院内分泌科部長の浜野久美子先生と、この春、関東労災病院に3ヶ月間国内留学されていた現浜松労災病院内分泌内科槙野裕也先生でした。浜野久美子先生は、東京大学医学部出身、エール大学に留学されたのち、関東逓信病院に長く勤務され、7年前から関東労災病院に赴任され、糖尿病、内分泌分野で、専門医、評議員としてもご活躍です。

今回は、このお二人からリラグルチドの使用経験について伺いました。

リラグルチドはGLP—1受容体作動薬ですので、食後インスリンの分泌を促し、消化管の運動を抑制する事で、食後の急激な血糖値上昇、食後スパイクを抑えることができ、しかも、グルカゴン分泌は抑えているので、余分なインスリン分泌の必要が無くなります。インスリン分泌能が充分な2型糖尿病では理想的な薬剤といえるでしょう。但し、消化管症状が出やすい事が唯一ネックになっており、継続治療できない方もいらっしゃるのが現状です。どの様な方に積極的に使用するのが良いかをお話いただきました。

まず槙野先生からは、リラグルチドを使用したHbA1c10%以上の症例に対してのご加療経験を、具体例をあげてお話頂きました。どの例も外来患者さんにありがちな、コントロール不良の40−50歳代の方で、BMIが30前後のインスリン治療は害になるのではないかと思われる例でした。HbA1cが10%以上の為、止むを得ずインスリン自己注射も入っていますが、リラグルチドを加えることで、入院、外来問わず、血糖コントロールを低血糖無く改善出来、インスリン使用量も体重も減量出来たという報告でした。特に、糖尿病歴や、SU剤、インスリン使用歴が短く、グルカゴン負荷試験においてΔCPRが0.34μg/ml以上の例で効果が認められていました。

浜野先生からは、リラグルチドの多彩な使用方法について豊富なご経験から、お話いただきました。現在診療されている労災病院ならではの取り組みでもあると思いますが、就労と糖尿病治療両面での支援を研究しておられます。インスリンや、経口血糖降下剤の用が多くなるほど血糖コントロールも悪化しており、ドロップアウトも出てきてしまう事が判明し、早期から基礎インスリンとリラグルチドを併用してHbA1c6%代を実現し、内服薬に切り替えていくことで、血糖を維持すると、体重増加も少なく、legacy効果で長期間良い血糖コントロールを維持できるということを実証されていました。治療が後手に回ってしまって泥沼化する事を完全に回避できていると思われました。特に、働き盛りの40-50歳代の男性に多いドロップアウトが減少するかもしれません。またOpe前コントロールにも基礎インスリンとリラグルチドを併用するという既成概念にとらわれない斬新な使用法についてもお話し頂き、発想の豊かさに驚かされました。糖尿病の治療は、特に最初の治療が肝心です。初めにどれだけ、改善出来、患者さんにもどれだけ自体を正しく理解して頂けるかで、その後の糖尿病治療は全く変わってしまうと思います。リラグルチドを使用できる方ばかりではないと思いますが、やはり、治療が後手に回らないこと、労働できる年齢の方を治療中断させない事が非常に大切だと思いました。

 

今後ですが、今月は、21日に当院恒例の第55回糖尿病料理教室を行います。

今回のテーマは、「カフェでランチしましょう」と、いつにもましてオシャレなタイトル、内容を予定しています。まだ、数名の空きがありますので、宜しければ皆様の患者さまにもご参加いただければと思います。

尚、今年5月から当院内分泌内科のメンバーが変更になりました。これまで2年間当院に勤務し、臨床、救急、研究発表、論文投稿にと大変貢献しくれた大場健司医師が浜松医科大学第2内科に戻り、代わりに鈴木究子医師が常勤スタッフとして赴任しました。火、水、金の午前外来担当は鈴木医師、大場医師は毎週火曜午後の外来のみ継続します。徳丸医師、後藤は、これまでと変わりませんのでよろしくお願い致します。

次回の病診連携会糖尿病勉強会は10月23日の予定です。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

遠州病院 内分泌内科 後藤良重 鈴木究子 徳丸光彰

 

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